よろず評論サークル「みちみち」

●我が生涯は一遍に台無し 女装男子研究本3(全文無料公開)

『我が生涯は一遍に台無し 女装男子研究本3』表紙

下記の文章は、2012年12月31日、コミックマーケット83で発表した『我が生涯は一遍に台無し 女装男子研究本3』の全文です。(図解、挿絵除く)
図解、挿絵の入った完全版の冊子を希望される方は、ぜひ COMIC ZINによる委託販売 をご利用ください。
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■はじめに

 ご無沙汰しております。女装活動を始めて3年目のみちろうです。とうとう出してしまいました、女装男子研究本第3巻です。「カメラ小僧の裏話」シリーズを4、5、6と立て続けに上梓し、期間の短い冬コミでは何を出そうかと思案していたのですが、結局のところ読者からの「女装本の続編はまだですか?」の声に根負けしてしまいましたorz

 第2巻までで女装についての基本的なことは一通り書いてしまったので、今回はここまで女装を続けてきた(続けてきてしまった)結果どうなったか、今はどんなことをやっているか(やめられなくなっているか)を面白可笑しくまとめてみました。第2巻以降で新たに挑戦したことや、起こったこと、判明したことなどをエッセイ仕立てに書いています。本書を読めば、女装によってどのように人生が行き詰まるかを如実に知ることが出来るでしょう(終。
 女装に役に立つ文章というよりは、筆者の魂をそのまま叩き込んだ文章になっています。これ書いていいのかなー?と思いつつ本当に最後まで勢いだけで書きました。あまり女装するときの参考にはならないかも知れませんが、女装男子の熱く燃えたぎるパトスは伝わるかと思います。火傷に注意(汗。

 聞くところによると、女装に挑戦する初心者に対して「この本は読んでおけ」と当サークルの女装男子研究本があちこちで勧められているとか(終。あっれー、ハウツー本ではないはずなのに、おっかしいなぁー。いいのかなぁー(汗。
 何はともあれ、年始の初笑いにお納め頂ければ幸いです。

2012年12月31日 コミックマーケット83にて
みちろう@十六夜咲夜コス

■目次

はじめに
目次
あれから3年が経ちました
女装をやっていていろいろ良かったこと
デブは醜いよデブは醜いよ!大事なことなので2回(略
おっぱいとチンコ
とにかく衣装から始まる
エステサロンに行ってみた
もう一度女装サロンに行きました
自己催眠をかけて女体化してみよう
女装コスプレイヤーも盗撮に気を付けよう
全国紙の女性記者から取材の打診がきました
このままではいけない!そんなことは分かっている!
おわりに
奥付

■あれから3年が経ちました

 どうしよう。また女装ネタで筆を執る事になってしまったorz どうしてこんなことになってしまったのか…。もうやらない、これは終わりと心に決めていたはずなのに。一発ネタとして始めたはずの女装活動は、もう一回、あともう一回だけ、これがホントに最後の最後、近いうちにやめるトラストミーと言いつつズルズル続けてしまい、気が付くと女装を始めて3年が経ってしまった。
 ああそうさ、やってみたら女の子の格好をするのが意外に楽しくて、止めたくても止められなくなってしまったのさ。もう三十路を超えたのに。こうなったらヤケである。女装本第2巻を書いて以降の女装活動の顛末をここに記してみようと思う。

 そもそも何故ここまで続ける事になってしまったのか。なんのことはない、最初の女装が思いの他女性の友達から好評で、女装し続ける事を明に暗に期待され、収拾が付かなくなってしまったからである。
 「で、今回は何のキャラやるの?」──ここ2年はコミケ開催の3週間くらい前に、ヒィヒィ言いながらなんとか同人誌の脱稿に漕ぎ着けると、まず最初に浴びせられる質問がこれである。周囲はさも君が女装するのは当然だろ勿論やるんだよねやらないなんて言わないよねがっかりさせないでよね的な空気になっている。逃れられない。あの、ウチはカメラ小僧の評論サークルなんですけど…。
 実際、毎度毎度新刊の入稿が完了するまでは原稿の事だけで頭がいっぱいで、当日のことは何も考えている余裕は無い。だがその質問が来るたびに「あ、やっぱり期待されてるのかな」「一応気になるキャラが無い事はないけど…」「うーん3週間か、今から準備すれば間に合うかなー」と脳内スイッチが入ってしまう。で、結局当日に「新キャラお披露目」という流れになってしまう(汗。というか、それの繰り返しで気が付けば3年目である。
 ウケればいいやとは思っていたが、女性に異様にウケるのは完全に想定外だった。まるで着せ替え人形で遊ぶかの如く、アレも着ようよ今度これが見たいとせがまれる。女性にせがまれるのは悪い気がしない…というかむしろ嬉しいのだが、何かが違う。何かが違うのだ。というかみんな喜び過ぎだろ。筆者を何だと思ってやがる(汗。
 約束通り(約束…?)コミケ当日に女装コスプレをお披露目すると、当の女性たちは待ってましたと言わんばかりにあれこれ女装の出来栄えの評価をしてくれる。言い方を変えるとダメ出しやアドバイスを貰う。肩幅が目立ち過ぎる。肩の縫い目をもっと内側に改造なさい。ボロボロの爪は可愛くないわ。甘皮をきちんとケアなさい。その貧相な胸は何?おっぱいには人類の夢と希望が詰まってるのよ。きちんと盛りなさい。まだまだ女子力が足りないわ。あなたはもっと女らしくなれる。なるべきよ。ならなければならない。だから改善した上で次回のコミケも女装なさい。──とまあ、こんな感じで良くも悪くも筆者の女装は周囲に受け入れられてしまっているのである。

 コミケ当日はともかく、日常生活の方ではどうかというと、率直に言ってだんだん女装してる事を隠すのが面倒になってきた(汗。ちなみに実家暮らしである(何。
 一応筆者にも良心というものがあり、最初は家族を悲しませまいと衣装や女性下着や化粧品などをこまめに見えないところに隠していた。だが、コスプレ衣装を買うたびにワードローブがギュウギュウ詰めになり、溢れたスーツやジャケットはそこら辺にハンガーで引っかけるようになったことで「お前のワードローブには一体何が入ってるんだ」と度々小言を言われるようになり、また通販で女性下着を買ってからというもの、定期的に女性下着メーカーのパンフレットやカタログ等が筆者の名前宛で届くようになり、なんとなーく気まずい空気になっていった。
 それでもわざわざカミングアウトするものでもないので、ずっと気まずいまま放置していた。まぁ、そうはいっても暗にバレているだろうからもういいか、とそのうち衣装や化粧品を隠さなくなった。普通に自室や脱衣所に置きっ放しにするようになったのである。未必の故意というやつだ。
 だが家族とは希望的観測をするもので「まさかうちの子に限って女装趣味なんて…」と思っていたらしいというか、まずやってることが明後日の方向過ぎて、女装という発想に至らなかったらしい。端的に言うと部屋に衣装や化粧品がある状況を見て、家族は筆者に新しい彼女が出来たと思われていたらしい(痛。だから何も言わずにそっとしておこうとしてくれたらしいのだ。アホか。
 結局その誤解は、筆者がセルフ撮りした女装コスプレ写真(の入った封筒)を玄関に置き忘れるという珍事のお陰で解かれる事となった。ちなみにそれでも未だカミングアウトはしていない。女装など知らぬ!存ぜぬ!マドモアゼぬ!で通している。

 どうやら一般人にとって、男の部屋にレディースの洋服や下着や化粧品の類があっても、女装という発想には至らないらしい。弟が部屋に入ってきた際、魔理沙やアリスのコスプレ衣装を見ても、兄が着てるものだとは認識出来なかったようだ。一般人の弟が精一杯状況把握しようと思考した結果は「兄貴、これ撮影会の衣装?」である。弟も筆者がモデル撮影会を企画したり、イベントでコスプレイヤーを撮影したりしている事は知っているので、女の子に着せる衣装をここで保管していると考えたらしい。

──違うよ(ニヤニヤ。 それは 俺が 着るのだ。

──弟、凍る。

 両親は薄々感付いているとはいえ、初めて家族にカミングアウトした瞬間であった。当然ながら弟はしばらくの間強烈にドン引きしていた。「いくらなんでも『超えちゃいけない一線』を超え過ぎだろーがよー」を連発しながら。すまんな弟よ。残念ながら君の兄貴は変態だ。
 今思えば筆者は女装している事に引け目などあったのだろうか。多分自分のしている事に「奇抜かも知れないが、如何わしい事はしていない」「それなりに受け入れてくれる人たちがいる」という自負が芽生えていたように思う。女装を繰り返し、そこそこ自信と慣れが身に付いてきた事で、バレても特に気にしなくなったのだ。いや、止めたいとは思っているけど。
 それ以降はというもの、オタク系の人との新たな出会いがあるたびに、相手がコスプレに興味があるようなら、時折人を選んでカミングアウトをするようになった。もちろん一般人にとっては基本的にお目汚しなので、普段はマナーとして伏せてはいる。今のところドン引きされて通報される事態には至っていない…と、いいなぁ。

 今では筆者宛に何か荷物が届くたびに、家族から「またスカート?」と聞かれるようになった。普段から書籍の購入にアマゾンを利用してるだけで別にスカートを買いまくってる訳ではないのだが、これ以上両親をぬか喜びさせた上で更に泣かせるのも面倒なので訂正もせずに放置している。

■女装をやっていていろいろ良かったこと

 わざわざ本誌で女装の方法論を解説せずとも、世の中には分かりやすく丁寧にやり方が書かれてある女装ハウツー本がたくさん出版されている。本誌は題名にこそ「研究」の文字はあるが、実際に女装に挑戦する方はそちらを読まれた方が有用だろう。
 ここでは紹介だけに留めておくが、一迅社『オンナノコになりたい!』『オンナノコになりたい!コスプレ編』『オンナノコになりたい!もっともっと、オンナノコ編』の三葉著三部作を買えば、女装の技術から心構えまで基本的な知識は一通り手に入る。
 むしろここでは一般的な商業誌に載らないような情報を載せた方が喜ばれるだろう。「女装をしたら男性ホルモンが減ってハゲが治った」とか「女装をしたらドーパミンが出まくって大学に受かった」とか「これらはほんの一部です。これだけの特典に関わらず、お布施は一切頂きません!しかもわずか一週間で驚くべき効果!!」みたいなここはウソでもいいから人生がハッピーになる女装のメリットを書くべきである。
 そこで本項では筆者の超個人的な視点による「女装をやっていて良かったこと」をありのままに晒し、女装に挑戦したいなーと思ってるけどちょっと怖いなーと二の足を踏んでいる子羊たちの背中を押してあげようと思う。崖に。

 率直に言うと、モテた(汗。今までモテ期などというものとは全然縁がなかったのだが、女装したら女の子とおしゃべりする機会が一気に増えた。あとウィッグや化粧品の取り扱い方がそこら辺の女子高生や女子大生より詳しくなってしまったので、相手がコスプレに初挑戦してるときなどは具体的にレクチャーするようになった。

女子「なんでこんなに詳しいんですか?」
筆者「俺も魔法少女だからさ」
女子「ちょww マジですかwww 詳しく聞かせて下さい!つか写真見たい!」
筆者「いきなり秘密がばれちゃったね♪ クラスのみんなには…ナイショだよ!」

という会話があるとかないとか(汗。このパターンで逆ナンパもされたり。
 加えて遠因の一つには、女性の立場や苦労について理解が深まったことがあるだろう。女装を通して「女でいること」に大変な手間、時間、金が掛かることを筆者自身思い知ったのである。その分女性に対して優しくなれたのかもしれない。
 フランスの哲学者ボーヴォワールは「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という言葉を残しているが、正にそうなのだ。女に生まれても、女子力を高めていないと周囲から女と認めて貰えない。女になるためには「人としての行動」に加えて、「女としての行動」が必要なのである。
 男と違って女は全身のムダ毛処理をしなきゃいけないし、肌の手入れにも気を使わなくちゃいけない。毎日小一時間掛けてメイクだってしている。
 コンディションが悪くて予想外に時間が掛かり、精一杯急いでもデートに遅刻してしまうことだってあるだろう。急に誘われても準備もなしにお出かけは出来ないし、崩れやすい髪形やメイクは常にトイレでチェックしたい。
 メイクは肌に油成分を載せている状態だ。どんなに途中でメイク直しをしても「女でいる」状態は一日6〜8時間しか保てない。それに朝のメイクの時間もあるから早く寝ないといけない。夜12時以降は女子力の魔法が解けるのである。
 男の感覚だと、洋服や下着は多少ガサツに扱ってもそうそう破れたり穴が開いたりしないものという感覚だが、可愛いレディースものの衣類はワンシーズン限りの繊細な作りのものが多い。ちょっと引っかけるとすぐビリッといくし、何回か洗濯するとすぐボロボロになる。だから洋服は季節ごとに買わなければならない。女の買い物は無駄遣いじゃないのである。男にはただの浪費に見えるだろうが、女子力を維持するために必要な経費なのだ。
 ほかにも女子特有の隠れた苦労や悩みはたくさんあるだろう。筆者は女装を通してその一片を垣間見ただけだ。男の場合は女装したいときだけ苦労すればいいが、女性はこの女子力の維持を毎日しているのである。
 女装するまで全然考えもしなかったが、男は超が付くほど毎日の生活が楽チンだ。「男子力」などという言葉が無いように、男としての振る舞いや努力をしていなくても普通に男に見える。女はそうはいかない。生物学的に女性でも「女でいること」を放棄してると女に見えないのである。時として男は女の隠れた苦労に無頓着だ。
 簡単に女性に共感出来るとは言えないが、目の前のキレイな女性は弛まぬの努力の賜物だということは理解出来るし、きちんと髪形やファッションに気付いてあげるのは男としての礼儀なのであろう。これは少なくとも女装をしたことで実感を持って得られた多面的な視点であった。

 もう一つの「女装をやっていて良かったこと」といえば、毎日がヤバいくらいに楽しいということであろうか(ぉ。
 行きつけの喫茶店のお姉さんには「みちろうさんって本当に毎日が楽しそうですよ
ね」と言われたことがある。はて、そんなに楽しそうに見えたのかしら。実際の人生は山あり谷ありでいろいろ失敗や遠回りもしてきた気がするのだが、全然そんな風には微塵も見えないくらい、今の筆者は日々の充実感や幸福感に包まれているように見えるのだという。
 確かに女装してからというもの、毎日が楽しくて楽しくて仕方がない。ここ1〜2年の間にも大変なことや辛いことがあったはずなのだが、覚えてないのである。一発ネタといいつつ続けているのは、本人が心のどこかで続けたがっているからに他ならない。「で、今回は何のキャラやるの?」と聞かれるのをやはり心待ちにし、誰かに期待されていることを免罪符にしていたのだ。
 それに女装本第1巻では、女装することを決意した際に下記のように書いていた。

 それにこんなバカ騒ぎは若いうちにしか出来ない、という思いも少なからずあった。やらずに後悔するよりやって清々しい失敗を迎えよう!やるなら20代の今だ!オッサンになってしまってからでは遅い!今までも自分の人生は挑戦せずに後悔してきたことだらけじゃないか!今ここで自分の殻を破らなくてどうする!変えるんだ!自分を!女装は大人になるための通過儀礼なのだ!元服なのだ!成人式なのだ!という救いようのないドーパミンが分泌し始めてしまった。時既に遅し。

この文章の通り、確かにこのときまでは「失敗を恐れず自発的に何かに挑戦し、自分の殻を破る」という経験が無かった。本当は筆者にも人生の岐路はいろいろあったのだが、自分で「達成感を得た、殻を破った」と納得出来るものが無かったのだ。
 「女装」は筆者の人生の中で生まれて初めて「壊れた」経験である。他の人にとっては好きな人への告白だったり、運動部で全国大会に出場したり、あるいは起業して大きな一発を当ててやろうとする挑戦に該当するだろう。たとえ失敗しても悔いは無い。自分でリスクを踏んだのだから。それが結果的に大好評という結果になり、人生初ともいえる挑戦が成功したのだ。だから筆者は初めて自分が生まれ変わった、自分を褒めてやりたいと思っている。要はこのような自己肯定感の心情がそのまま顔に表れ「楽しそうにしか見えない」となるのだろう。ああそうさ、女装したお陰で毎日充実してて超楽しいよ。楽し過ぎる。生きてるって素晴らしい。どうしよう。困った。助けて。

■デブは醜いよデブは醜いよ!大事なことなので2回(略

 女装本第1巻を書いたとき「これは女性の読者から殺されるな」と評された箇所がある。「3ヶ月で13kg痩せてしまったダイエット法」の項目だ。第1巻では71kgから58kgまで一気に減量した経緯を書いている。そこで「結論、女装ダイエット最強
!痩せたい人はみんな女装すれば万事解決(ぉ。」とまで豪語していた(汗。当時は初めての女装に対して、半年間背徳的な興奮でアドレナリンがドバドバ出まくっていたのでまったく苦にならなかったのだ。
 良くも悪くも短期的かつ具体的な目標設定であり、女装で醜態を晒すのはイヤだ!キレイなオンナノコになってやる!素敵な霧雨魔理沙になってやるんだ!とダイエットを開始した2010年1月1日から本番の8月15日まで一気に駆け抜けるプログラムだったのである。
 だがこのダイエット法にも欠点はある。これは本番である夏コミ当日に目標の体重になっていればいいだけの話であり、その後の長期的な体型維持については何も考慮されていないのだ。つまり、体型を維持する為には次々女装し続けなければならないのである。また女装に慣れてくると当初の興奮も次第に落ち着いてくる。第1巻では偉そうに語っていたが、実際はその後5kgほどリバウンドしてしまった…orz 嗚呼、どうして身体に悪いものほど、こ ん な に も 美 味 ェ ん だ ろ う な ぁ ぁ ぁ ぁ マック吉野家マック吉野家マックマック二郎二郎二郎吉野家。
 という訳で、気を取り直して現在再ダイエット中である。第1巻では短期集中プログラム実践記だったが、今回は女装の為のダイエットを科学的に検証してみよう。

 世の中には様々なダイエット法が提唱されているが、大きく分けて健康的な努力の積み重ねによる「正攻法」と、努力しないで「毎日○○するだけ」みたいな「変化球」の2種類がある。
 正攻法は適度な有酸素運動で脂肪を燃焼し、かつ正しい食生活で過度な脂肪を溜め込まない方法だ。対して変化球は努力がどうしても続かない人向けに、最低限脂肪を溜め込まない生活習慣を取り入れるか、あるいはカロリーの少ない食事をしてもらうものである。だが同じ人間が減量をする以上、ダイエットの原理は同じだ。
 お腹のポヨンポヨンの皮下脂肪を取り除くには、これ以上蓄積が進むのを抑え、燃焼させるしかない。まずは蓄積を抑制する方に注目してみよう。
 小学校の時、家庭科の授業で5大栄養素くらいは習ったことがあるだろう。日々の活動エネルギーになる炭水化物(ごはん、パン)と脂質(バター、油)、身体を丈夫にするたんぱく質(肉、魚)、体の調子を整えるビタミン(緑黄色野菜、果物)、歯や骨を作るミネラル(牛乳、小魚)の5種類だ。このうち脂肪の主な原因になるのは炭水化物と脂質である。
 特に気を付けなければならないのが炭水化物(ごはん、パン)だというのは誰もが知っているだろう。変化球のダイエット法では三食のうち一食を寒天などカロリーの少ない食品に切り替えたり、野菜→肉や魚→汁物→ごはんの順番で食べさせたりして1日のカロリー摂取(吸収)量を減らそうとするアプローチだ。
 だがごはんやパンを食べてから、それが脂肪になるまでに3日ほど掛かる事は意外と知られていないのではないだろうか。食べればその分体重は増えるが、それがそのまますぐ吸収される訳ではないのである。3日掛かるということは、過去3日間の食べた量の平均値が今日の体重に反映されているということだ。つまり、過去3日間の食べた量でバランスが取れていれば、理論上体重は増えないのである。
 例えば今日の夜に二郎でラーメン大を食べても、明日と明後日の夕食の炭水化物を半分の量(半分のカロリー)にすれば3日後の体重は増えない。もちろんこの3日間の食べた量の平均値が適正値でなければならないが、メリハリが取れていれば食べたいときに思いっ切り食べていいのである。
 どうせ人の体は過度にごはんを抜いても、体が飢餓モードになり脂肪が溜まりやすくなる体質になるだけだ。エネルギー不足で日々の活力も出なくなる。これから活動するという朝と昼の時間帯はしっかり食べた方が良い。どうせ禁欲的な食生活など長続きしないに決まっている。日々の夕食でごはんを半分に出来ているのであれば、週に2回くらいは好きなものを食べていいのである。

 次に脂肪の燃焼についてだ。筆者の経験則的な話だが、一日の中で一番体重が軽くなるのは朝起きてトイレに行った後、かつ朝食を食べる前のタイミングである。これは睡眠時に前日の運動した分の疲労や、筋肉に掛けた負荷の回復のために血中の糖分や脂肪分が燃焼するためだ。脂肪は寝ているときに燃焼する。だから寝不足だとダイエットも効率が悪い。夜は早く寝るべし。睡眠もダイエットのうちだ。
 加えて回復するべき筋肉の組織が多いと効率が良い。体の生命運営が活発だとそれだけ活動することも出来、その分疲労回復に燃焼される脂肪も多い。要は基礎代謝を上げておくと効果的にダイエットが出来るのだ。加えて健康になり体も丈夫になる。
 基礎代謝を上げる為には筋肉を付けることが必要だ。そうは言っても全身をムキムキに鍛えてしまうと女装には不向きの体付きになってしまうだろう。そこで女装向きの筋力トレーニングとして体の内部にある筋肉、インナーマッスルを鍛えるのである。詳しくはググって欲しいのだが、表面の筋肉とは違い、深層の筋肉を鍛えても体の表面はムキムキにならないというメリットがある。また普段はあまり使わない部類の筋肉なので最初は大変だが、ここを鍛えるだけで基礎代謝を一気に上げることが出来る。それに関節や姿勢の安定にも繋がり、体幹も鍛えられ血液の循環が良くなる。特に腹筋の内側で腹部を横に包み込む腹横筋を鍛えれば、お腹が出っ張るのを押さえ込むコルセットのような効果があり、ウエストを細くすることが出来る。どうだ、鍛えたくなってきただろう?(笑。
 ここで朗報である。インナーマッスルを鍛える為には、筋力トレーニングの王道である腕立て伏せや腹筋背筋スクワットなどの辛い無酸素運動ではなく、エクササイズやウォーキングのような有酸素運動で鍛えられるのだ。少し中〜強程度の運動をするだけだ。しかも筋力トレーニングそのものは3日に1回10分間程度でいい。最初は体中内部からのピキピキ筋肉痛になるが(汗、やがてそれも快感になる。実際、最近流行しているコアリズムや骨盤ダイエットなども、インナーマッスルを効果的に鍛えて関節や姿勢の安定させ、基礎代謝を向上させるアプローチのプログラムなのである。

 基礎代謝を上げたらあとは有酸素運動をするだけである。長時間かつ長期間続けられるものが望ましい。
 筆者のオススメはやはりウォーキングである。歩くだけなので誰にでも出来、安価に、かつ長続きする。最近筆者の中でマイブームなのは、スマートフォンの万歩計機能だ。auのRun&Walkアプリを使うと歩数だけでなく、歩いた時間や距離、消費カロリーまで自動で毎日記録してくれる。リアルタイムにMETs(活動・運動を行った時に安静状態の何倍の代謝をしているかを表す指標)まで表示してくれるので、どのくらい効果的にカロリーを消費出来ているか確認出来る。
 ダイエットの為には腕を大きく振って少し大股で早歩きしよう。足を地に着けるときに重力に任せてストンと落とすのではなく、筋力を使ってゆっくり踵から地面を踏み込むと普段使わない部分の筋肉をついでに鍛える事が出来る。毎分100歩のペースで1時間歩くのが日々の目標だ。1時間で6,000歩+生活上の徒歩1,000歩で1日7,000歩をアプリに目標としてセットしておく。目標達成するとカレンダーに★マークが付くので、毎月カレンダーを★だらけにしてやろうという気になるのである。

 最後にダイエットを長続きさせる為のおまじない。おみやげみっつ、たこみっつ。
いろいろ御託を並べてきたが、結局ダイエットは短い期間で具体的に実現可能な目標を作り、日々の生活の中にダイエットを組み込むことが出来れば大抵上手くいくし、それが出来ないから多くの人が悩んでいるのである。
 改めて筆者の最初の成功例を振り返ってみると

・夏コミで女装を成功させる為という具体的で楽しい計画
・1月1日から8月15日までという明確なゴールの存在
・7ヶ月の間に71kgから60kgへという無理のない目標
・「犬の散歩のついでに」と日常の暮らしの中に組み込む
・毎日体重計に乗る、毎日EXCELで記録を付ける
・長期で減少トレンドなら、体重が増えた日があっても気にしない
・週に2回くらいは好きなものを食べてもいい

とまあ、意外と長続きする為のヒントの宝庫となっている。それにダイエット活動が軌道に乗って日々の習慣になってしまえば、散歩をしないと気持ち悪く感じるようになり、ジュースやお菓子類も摂りたくなくなってくる。痩せるための目標に向かって日々努力をし、向上心を持って活動している自分が大好きになってくるのである。その段階に行くまでは2〜3週間ほどだった。苦労するのは「始めるまで」と「軌道に乗るまで」の初速度を如何に付けるか、という部分である。筆者の場合、その勢いを付けるものが女装だったのだ。
 次のコミケで○○のコスプレする!そのために半年で10kg痩せる!というのは、短期的かつ具体的でハードルが小さく、楽しい目標設定になるのではないだろうか。結論をまとめると、長期的な体型維持の方法なんて実は短いスパンでの目標設定とその達成の繰り返しで、筆者の場合は女装し続けなければならないということだ。
 でもまぁ、今のところ楽しいのでそれでもいいかと思っている。いつかは9号が着られるようになりたいなー(ひとりごと。

■おっぱいとチンコ

 誰だ!男の娘は胸がペッタンコだからいいんだとか言った奴は!そこに直れ!ぶった斬ってやる!その言葉を信用して最初ヌーブラだけで済ましていたら、普通に知らない女子から直球で「胸が貧相ですね」とか言われたんだぞorz海よりも深く傷付いた筆者の心をどうしてくれる!初めて貧乳で悩む女の子の気持ちになったわ!
 いいか、男の娘キャラだろうが女装男子だろうがおっぱいは必要なんだよ!おっぱいのいらない人間などこの世には存在しない。みんな好きだろ?俺だって好きだよ!おっぱいがなきゃ人類がここまで繁栄することは無かったはずだ!違うか?ええ?
 女装ではおっぱいを盛る行為を邪道だとする向きもあるようだが、筆者は強く異を唱えたい。おっぱいのない女装は本当に切ない。切なかった。自分で揉んで悦に入ることすら出来ない。何が楽しくて女装するのか今一度考えなければならなかった。危うく哲学者になるところだったわ。

 女装するに当たっておっぱいは足し算の造形である。自分の体に付け足せばよい。ブラジャーを付ける羞恥心さえ捨てれば、タオルでも緩衝材でも好きなものを詰めればいいのである。あとはブラの補正がキレイな胸のかたちを作ってくれる。そういえば近年はメンズブラとかいうものも出て来た。「男だってブラを付けたい。フィット感を味わいたい。安心したい」というニーズに応えたもので、楽天の男性用下着部門で売上ランキング一位を誇るそうだ。馬鹿か!「男性用下着だから恥ずかしくないもん」だと?「付けると人に優しくなれる」だと?なんで妥協するんだよ!なんで保身に走るんだよ!女物を付けろよ!フリフリでサテンの可愛いブラを付けてキュンキュンしろよ!自分の身を焦がせよ!そんなことで女装魂を燃やせると思っているのか!気合いが足りないんだ気合いが!すまん筆が滑った。
 経験上ヌーブラ+フルカップブラジャーでは全然足りなかった。多少は胸元のラインが変わるし、Bカップ程度の感覚にはなれるのだが、せっかくの女装なのにわざわざ微妙なサイズを体感することもないだろう。
 何を盛るかだが、ここらへんについては女装グッズを扱うアダルトショップに適切な詰め物がたくさん取り揃えられている。筆者のオススメはNIGHT LOVE STORYの『素人お姉さんのおっぱい』シリーズだ。有り体に言うとオナホールに使われるデイジー素材(人肌のような柔らかさの医療用シリコン)で作られた人工乳房だ。実在のキャバ嬢のDカップのおっぱいから採寸し象ったもので、非常に柔らかく重心で垂れるようになっている。実際に手に取ってみると微妙に左右で形が違うところまでリアルに再現されているのである。ちなみに毎年改良が続けられているらしく、サイズが一回り大きくなった『素人お姉さんのおっぱいD』や、デイジー素材の内部にゼリーの注入し二重構造にして更に柔らかさを追求した『素人お姉さんのおっぱいDプレミアム』がある。ちなみにプレミアムは製造が難しく完全手作り品だそうだ。10,185円で売られている。
 だが、中身がいくら至高の柔らかさだといっても、結局はフルカップブラジャーの中に入れ込んでしまう。形はキレイに出るし重量感もあるのだが、プルプル乳房が揺れる感覚には乏しい。乳房の揺れを体感したい場合にはそれ専用のブラジャーがあるのでそちらも紹介しておこう。海外製になるが『Luv la Bra(ラブラブラ)』というものだ。ひみつの嵐ちゃんで大野くんが付けて走り回ったりしていたので、知っている人も多いかも知れない。これはブラが二重になっており、外側のブラにオイルパットを仕込んでゴム製の緩い肩ひもが伸縮することでゆらゆら揺れる構造となっている。男性には未知の領域を体感出来るアイテムなのだが、元々は女装アイテムではないらしい。コレ女性が付けるのか?男性以上に自分の負けを認めることになると思うのだが。まあいいや。

 足し算の造形の後は引き算の造形である。ウエストについてはウエストニッパーやコルセットを使って絞ることである程度定石の答えは出ている。問題はチンコの方だ。邪魔だからといって着脱式になっている訳ではない。BL好きの腐女子の中には「許されるなら!好きな男性キャラを押し倒したい!恥ずかしくて乱れ泣き叫ぶ姿を見たい!しかしチンコがない!この矛盾!わかりますか!わかりますか!!」と心の叫びを持つ御仁がいるので是非貸し出したいくらいなのだが、残念ながらホモサピエンスはそういった新時代のニーズに完全対応出来るまでには進化していないのである。
 チンコの処理方法は「目立たない衣装にする」か「おマタに挟む(ペニスタック)」かのどちらかしかない。スカートであれば大抵無視出来るのだが、それでもタイトなものだと股間が目立ってしまう。女性の骨格は男性と違って、お尻が突き出る代わりに股間は引っ込む構造となっているため、少しでもモッコリがあるとモロに分かってしまうのだ。女性の読者であれば、試しに自分の股間にソーセージを格納して衣服を着てみて欲しい。別にいやらしい意味でも何でもなく、股間を目立たなくすることはとても困難なことが分かるはずだ(←食べ物を粗末にするな。
 ああちなみに、チンコの内部にある海綿体という組織は本当にソーセージに似てい
ることはご存知だろうか。ネットでたまにチンコが骨折したという話を聞くだろう。チンコに骨はないのだが、興奮して固くなってるときにアリエナイ方向に曲げるとポキンとソーセージのように折れてしまうのだ。海綿体は折れたら二度と元に戻らない。人生終了のお知らせである。ああ書いているだけでアソコが「ヒュン(縮。」としてきた(汗。そのくらい極めてデリケートな部位なのである。股間に格納を試すときは是非ソーセージが折れないように留意して欲しい(←だから食べ物を粗末にすんなや。
 「股間の目立たない衣装にする」というアプローチは、フレアスカート系の衣装を着る分にはいいのだが、タイトスカートやチャイナドレス、レオタードや女性水着を着る夢は捨てなければならない。ひどいよこんなのぜったいおかしいよあきらめたらそこでしあいしゅうりょうだよ。というわけで、もう一つのアプローチに目を向けてみよう。
 チンチンをおマタに挟んで、オンナノコー!(ドヤァ! ──男なら誰しも、子どもの頃にこのようなアホなことをやって遊んだことがあるだろう。思春期ならそれで自分の股間を見て興奮を試みたことあるはずだ。あとはそのまま瞬間接着剤で貼り付けてしまえばいい。冗談でも何でもなく、そのような特殊メイク用の接着剤があるのである。一番デリケートな局部に接着剤を使うのが抵抗あるなら、医療用の皮膚テープでもいい。女装本第1巻にも書いたが、おマタの内側には骨格的に生殖器を格納出来るスペースが空いているのだ。この度実際に指を突っ込んで探してみたのだが、うん、確かにあった、入る。いける。
 もう一つの固定方法としては、メンズのTバックショーツやペニスストッキングがある。どちらもチンコを下向きに固定する下着だ。で、試しに岡田快適生活研究所の「ペニストッキング」を買ってみた。ちなみにこの会社、2011年6月設立ということで女装本第2巻の後に創業したらしいのだが、現状「ペニスストッキング(単語上部に黒点付加)」で検索するとこの会社の「ペニストッキング(単語上部に黒点付加)」しか出てこないほどの大ヒット商品である。
 付けてみた感想──というか正に今装着しながらこの原稿を書いているのだが──ストッキング素材とはいえ、パンスト等とは異なりかなり複雑な半二重構造だった。外側がTバック状のヒモパン。内部にチンコを下向きに固定する筒状のサポーターがある。サポーターに装着した後、チンコをアナルの方向に牽引しながらヒモを結ぶのだが、ストッキング素材のヒモがメチャクチャ結びにくい。ゴムを蝶結びにするような難しさだ。しかも伸ばした後ろ側で。イボ結びにしたら脱げなくなるし(後で椅子に座って前側に伸ばして結べばいいことに気付いた)。
 あと構造上先っちょがそのまま股間の真下にくるので、クロッチのある女性下着
が必須である。説明書によると「装着したままで座ってのお手洗いが可能です(女性用ビデで股間洗浄出来ます)」とあるので、実際にオシッコをしてみた。女性的感覚を味わえるのかと思いきや、どうも締めつけがキツイせいか下腹部で力んでも尿が出にくい。うーん、女性は尿道が短いので気が緩むと漏らしやすいと聞いたことはあるのだが、ただでさえ男性は尿道が遠回りになっており、今はさらに先っちょを下向きに折り曲げているのである。この感覚はどうも違うのではないだろうか。
 ついでにちょっとワクワクしながらビデを体感してみたのだが、濡れた。ストッキングが。うおい(驚!なんぞこれー!ビショビショじゃねーかよ!ショーツ穿けないじゃないか!製造元のウェブサイトで確認してみたら「ビデ洗浄時にペニストッキングは濡れますが、極薄なので軽く拭いてやればすぐに乾きます」とのこと。つまり、用を足した後はそのまま個室でショーツ半脱ぎのまま乾くよう小躍りをしろということか。やったけど。どうやらこれはビデは使わずに普通にトイレットペーパーでチンコを拭いた方がよさそうだ。
 さて、肝心の股間シルエットはどうかというと…うーむ、ストッキング素材なこともあり、モッコリが完全には隠れない。タイトスカートやチャイナドレスはいけるが、レオタードや女性水着は厳しい感じ。マンガ等でよくある「え?キミ男なの!?──ゴメン、ちょっと確認させて?」と積極的な女の子に股間を触られるみたいなシチュエーションが万が一実際にあったとしたら、まず確実にバレてしまうだろう。そうそう、そういう羨ましいシーンがあったとしても興奮してチンコを固くしないように。男性的な生体反応は男性ホルモンを分泌してしまう。ヒゲが生えたり肌が荒れたり、女装向きの体つきから離れてしまうのだ。それに下向きだと痛い。
 とは言え、接着剤に比べれば手軽であることは間違いない。フレア系スカートなら普通にショーツとストッキングで、タイト系スカートならペニストッキング着用、レオタードや女性水着は接着剤と使い分ければいいだろう。水着での女装は誤魔化しが一切効かないので究極的に難しいとは思うが。
 筆者の場合は魔理沙やアリスなど、ロングフレアスカートを好んで着る機会が多いのでチンコのモッコリはそれほどシビアな問題ではない。ペニストッキングは体験としては面白かったし装着感自体は快適だったので、普段から常用して女性感覚を味わうことも出来るだろう。
 まぁ、ここ最近の筆者は女装時のオシッコでも、普通にスカートをたくし上げて無理矢理小便器で立ちション(!!)してますけどね。だってコミケ会場のトイレ、ことごとく男性用トイレが女性用トイレに変更されてて、数少ない男性用トイレの個室ウンコ列も長蛇の列なんだもん。女装も3年目になればそりゃあ逞しくもなりますよ。

■とにかく衣装から始まる

 なんだかんだ綺麗事を並べたところで、みんな自宅で深夜こっそりスカートを穿いたりくらいはしてるんでしょ?いや、いい、皆まで白状しなくていい。筆者は自分が特別な人間だとは思っていない。だから自分が考えていることは当然他の人も考えているだろうし、自分が思い付いたことは誰かしらが先に思い付き、既に実践済みなはずなのである。筆者がいくら自分の頭で独創的で変態的なことを思い付こうとしようが、残念ながらそれらはすべて誰かが既に実践していることなのだ。こうやって隠れてコスプレ衣装を着てキュンキュンしてようが、それこそ新宿に女装サロンが開業した1979年の頃からそういう女装趣味の男性は存在していたし、今も毎晩せっせとスカートを穿いて鏡の前で「うふ♪」とやってる隠れ女装男子がいるはずなのだ。それこそ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のゆきあつみたいな奴が。成績優秀で容姿端麗なイケメンほどみんな隠れて女装していると考えた方が間違いはない。
 女装が相当にハードコアな活動だった昔と比べれば、昨今は男の娘ブームも相まってカジュアルに女装を試しやすい土壌が出来てきた。ドン・キホーテでは割と抵抗無くコスプレ衣装やメンズサイズのレディースファッションを買うことが出来るだろうし、ネットと通信販売を使えば誰とも対面せずに女性の洋服を入手出来る時代である。夜中こっそり隠れて女装する分には一切恥ずかしい思いをしなくて済む。恐らく誰でも簡単に挑戦してるはずなのだ。

 かく言う筆者の女装も衣装から始まる。筆者の場合はコスプレ活動でもあるので、好きな作品の好きなキャラのコスチュームを探すのだ。そして「あ、コレ来てみたい」というコスプレ衣装が見つかれば、あとはそれを着る為の努力や準備が始まるのである。つまり「アパレル企業レベルの品質で、完成度の高くて超可愛い衣装」が、筆者のテンションに火が点くスイッチだ。そういう意味では、コスプレイヤーとして衣装を手作りすることにはさほど興味が向いてないのかも知れない。
 好みの問題もあるが、いかにもなアニメ的女性記号満載の衣装が大好きだ。ドレス並にフリフリで、スカートは円形に広がるくらい生地が大量に使われててバサバサ出来るほどボリュームがあって、腰の後ろには大きなリボンが付いていて、肩はパフスリーブというような大胆なシルエットのコスチュームが大好きだ。もしこの本が売れに売れまくったら、いつかコスパティオやキャンディーフルーツでフルオーダーメイ
ドのレポートをしてみたいくらいである。10万円くらい掛けて。
 一度ひとつの全身コスプレのパターンが完成すると、次に別のキャラのコスプレをするときはその応用になる。筆者の場合、最初に東方Projectの霧雨魔理沙だったので、一般的な女性キャラをする為のパーツは一通り揃っている。具体的にはウィッグネットや髪留め、ブラジャー、おっぱい、コルセット、ヒップパッド、補整下着、ドロワーズ、パニエ、ストッキング、ニーソックス、フリル付きソックス、ローファー、ヒール、ブーツ等である。同じような女性キャラをするならそのまま流用出来るのだ。
 事実、次に挑戦したのは同じ東方Projectのアリス・マーガトロイドだったので、アリスの衣装とボブレイヤーのウィッグと黒ストッキングを買い足すだけで済んだ。よほど衣装やパーツの組み合わせや構造が違うものでない限り、ウィッグと衣装だけで何とかなってしまうのだ。おお、なんか俺、コスプレイヤーっぽくなってきたじゃん?と思ったものである。

 コスプレイヤーの観点から衣装以外のパーツについても、3年経って何が変わってきたか記しておこう。
 まずウィッグについてである。最初はすぐにボサボサに絡まりダメにしてしまっていたが、大分取り扱いにも慣れてきた。後で気付いたのだが、メーカーによって大分ウィッグの材質が違うのである。メイプルウィッグは光沢感がとても強く、逆にアシストウィッグはマットに映る。光沢感があると頭が立体的に見え、マットだと平面的に色そのものが目に飛び込んでくる。これはキャラのイメージに合わせるべきだろう。通販だと買ってからイメージ通りの色ではないこともあるので、全カラーサンプルを予め買っておくこともオヌヌメ。
 それに頭のサイズもメーカーによって微妙に異なる。一般的に女性は髪が長く、長髪をウィッグの内側に収納する必要があるため、ウィッグは女性の頭より一回り大きめに作られている。男性の場合そのままフィットするのでちょうどいいのだが、モノによっては少々キツイサイズもあるようだ。一応被ることは出来るのだが、1時間ほど経つとどうしても頭痛がしてくるのである。コスプレ中に外す訳にもいかないので(それに女装コスプレイヤーとしてのプライドが許さない)その日一日頭痛に耐えることになる。緩いものを買って内側のバンドで調整しよう。ちなみにアシストウィッグでいろいろ買いまくっていたら、何かキャンペーンだったらしく勝手にヘッドマネキンが送られてきた(汗。
 買ったばかりのウィッグは加工しやすいよう前髪が異様に長い。誰でも貞子になれる。そのまま被ると野暮ったいのでまずはウィッグカットしなければならない。ちょうど良くヘッドマネキンがあるので、マネキンの目に髪が掛かるか掛からないかの位置でまずは真横にパッツンと切る。そのままだと日本人形みたいになるので、次は少しずつ縦にハサミを入れるか、カミソリで縦に梳いていくのである。何度か被りながら調節すれば初めてでも上手くいくようだ。筆者はわざわざ梳きばさみを買わなくても何とかなった。マネキンのおでこがグロいことになったけど(汗。
 女装コスプレをするまでカラーコンタクトはおろか、コンタクトレンズ自体したことがなかった筆者だが、コンタクトについても大分詳しくなった。カラーコンタクトは装飾品であるため、どうしても度なしのタイプの方がレパートリーが多い。度ありだと欲しい色のタイプがないこともしばしばなのである。極端な話、近視の人は裸眼の視力のまま気合いで乗り切るか、レーシック手術をするしかない。ちなみに筆者は気合いで乗り切るのが好きだ。まぁ撮影時以外はこっそり眼鏡を掛けていればなんとかなるものである。
 そういえば靴についても、コミケの過酷な環境を歩き通したら一足ブーツの底が剥がれてしまった。結構エロエロな流線型の作りで気に入っていたのだが、買い物途中だったこともあり歩き方がガサツだったのかもしれない。女装初期はヒールを履いて脚の小指を潰したこともあったが、最近は最初からテーピングをするようになった。今のコミケでは利便性重視で女装コスプレしつつもシューズを履くことも多いかな。
 そろそろボロボロなおっぱいや女性下着やコルセットについても悩みどころである。新しく可愛いのを買おうと思えば買えるのだが、別に見せる部分ではないし、特に破損したりもしていない。あとは純粋にテンションを上げる道具としての効果だけである。本音は「女の子がそんなボロボロの下着、身に付けてちゃダメ!」という新調したい気持ちがあるのだが、一方で「おい!いつまで続けるつもりなんだ俺!」という自分ツッコミの声も聞こえる(汗。あー迷うー。でも買わずに後悔するより、買って後悔するのがコミケ参加者の矜恃かなとも考えている(死。
 ボロボロといえばコスプレ衣装自体も、着てるうちにあちこち縫い目がほつれてくる。女装本第2巻を書いていた頃は、自分で補修するにも限界があるし仕方ないのかなと考えていたが、よく考えてみれば洋服のリフォームはクリーニング店で受け付けてくれるのだ。どうせいつも襟にファンデーションの付きまくった汗だくの衣装を毎回クリーニングに出しているのである。衣装のリフォームを追加で依頼するくらい造作もない。袖のほつれ、取れたボタンの取り付け、穴の修復、プロはなんでもしてくれる。クリーニング店と仲良くなっておくといろいろ頼りになるぞ。会員登録が必要なのでいろいろバレるけど。まぁ気にしないことだ。

■エステサロンに行ってみた

 女装コスプレ活動を3年も続けていると、普段の男性モードでの日常生活に置いても「女子力」が滲み出てしまう。特に紫外線対策やスキンケアに関してそれが顕著だ。気が付いたら周囲の女子より紫外線対策やスキンケアをしてるのである。夏でも長袖、帽子、日焼け止め、化粧水乳液ポーチは持ち歩きという有り様だ。特にカミングアウトをしていないのに

「みちろうさん、アタシらより女子力がある…」

と言われてしまったりするあたり、なんかオネエとかに勘違いされてるのかしらとも思うのだが、まぁ訂正するのも面倒くさいので放置している。
 女装本第1巻で絶賛した通り、化粧水によるスキンケアと脱毛は続けている。全身脱毛はコスプレしない時期だと労力の割にあまり意味がないため、あくまでヒゲ脱毛だけではあるが、それでも剃るよりも抜く方があごの肌荒れが少ないのだ。
 さて、脱毛は相変わらず電動脱毛器とピンセットの合わせ技だが、せっかく第3巻を書くのだからそこからステップアップした脱毛も試してみたいところである。そこで今回は永久脱毛に挑戦することにした。まずはヒゲからである。
 まぁ、どうせヒゲなど人生において邪魔な存在である。一度思いっ切り伸ばしてみたこともあるし、もういいだろう。筆者本人は格好良く伸ばしたつもりだったのだが、後から聞いた話、最高にカッコ悪くて痛々しかったそうだorzちくしょう!ヒゲめ!お前なんかもう二度と生えてこなくてもいい!焼き殺してやる!
 とはいえ、永久脱毛とは永久に毛が生えてこない処置なのだろうことはわかるものの、原理や内容は未知の世界である。とりあえず専門店に行っていろいろ聞いてくるのが早いだろう。どうせ羞恥心など化粧品を買うときに捨てたのだ。今更エステに行くなど造作もない。レッツラゴーエステサロン!

女性店員「すみません、当店は女性専用なんですが…(苦笑)」

ぴぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
 この言葉と、付随する(苦笑)の破壊力は凄まじく、筆者のA.T.フィールドは跡形もなく吹き飛ばされたorzロンギヌスの槍は無残にも油断していた精神の奥深くに突き刺さったのである。急角度で。
 初めて知ったのだが殆どのエステサロンは女性専用店なのである。ネットで男性向けのヒゲ脱毛のエステ広告をよく見かけるので、フラッと入ってパンフレットくらいは貰えるものと思っていた。ああ腹が立つ!考えが至らなかった自分に!

 仕切り直しである。最初から教えて君ではいけないと身に沁みた。調べてみると、永久脱毛はなにもエステサロンでなくとも形成外科などの医療機関で受けることが出来るのである。
 エステサロンで受けられるのは電気針やフラッシュによる脱毛であり、医療機関で受けられるのは医療レーザーによる脱毛である。特にレーザー治療は医療行為なので医師にしか扱えない。ちなみにただのヒゲ脱毛は保険適用外である。
 エステで受けられる電気針方式は毛穴よりも細い針を挿入し、そこに電気を流して毛根を焼き切る方法だ。脱毛する箇所に麻酔後、先端のみを残して絶縁された針を刺して毛根を焼いていくらしい。
 レーザー方式はスポット照射により毛根に直接高エネルギーを当てて組織を破壊する方法だ。レーザー光の波長は高い振幅で発振し強いエネルギーを出すだけでなく、強い色選択性がある。つまり脱毛用のレーザーは「黒色にのみ吸収され、白色には吸収されない」という色選択性の性質を利用するのである。皮膚表面にレーザーを照射すると、表皮には変化を起こさずに内部の黒色の毛だけを破壊することが出来る。深部では毛に接する周囲組織へ間接的にエネルギーが及び「毛の成長の元である毛包が破壊する」ことで脱毛になるのである。
 毛は生え変わる周期がある為、今生えている毛は全毛根のうちの3割ほどでしかない。レーザーは今生えている毛根にしか効果がないため、1ヶ月ほどすると休眠していた毛根が活動を始めることでまた生えてくるようになる。定期的にレーザー照射を受ける必要がある。個人差と満足度にもよるが、5回ほど受けると産毛以外ほぼ生えてこなくなり、10回受けるとツルツルになるそうだ。だがそれでも加齢によって新たに毛根が出来てくるので、実質的には永久脱毛にはならない。永久に生えてこないのはあくまで今生えてきている毛根に対してだけの話である。
 さて、エステサロンと医療機関のどちらがいいかという話になるが、理屈抜きに根本的なところでエステにはもう二度と逝きたくないので、今回はレーザーでの脱毛に挑戦することにする。もうヤケだ。思い立ったらすぐ行く。今から行く。
 レーザー治療の受けられる診療科としては形成外科、美容外科、皮膚科などがある。形成外科は怪我や病気なので負傷した部分を通常の状態にまで回復させる医療である。それに対して美容外科は通常の状態から医療技術でさらに美しくなる為のものだ。ヒゲ脱毛は後者に入る。皮膚科でもレーザー機器が置いてあるところでは可能らしい。
 で、早速男性のヒゲ脱毛に対応している美容外科に行ってみた。やはり女性ばかりのなか問診票を渡され「脱毛、部位:ヒゲ」と書くと、そのまま何も聞かれずに診察室へ。お医者様に面会すると、これまた特に理由も聞かれずに「ヒゲの脱毛ですね?既に伺ってるかもしれませんが、結構痛いですよ?初めから脅かしちゃうのもなんですが…」と実務の話になる。すごい!患者に恥をかかせない!エステの(苦笑)とはエライ違いだ!
 事前に詳細に調べてきたこともあり、カウンセリングはすんなり終わった。ヒゲ脱毛は1回のレーザー治療が5分足らずで終わるらしく「とりあえず初回を今やっちゃいましょう」と隣の処置室に移る。ベッドに横になると看護婦さんに目を保護する金属製の眼鏡みたいなものを付けてもらった。「じゃあいきますよー」やや手に汗握る。これからの痛みを構えているせいか、軽くドキドキし出した(汗。

──バシュ!  「こんな感じなんですが、大丈夫ですか?」

 え?今の?最初の1、2発は、何か当たったなと感じるだけで、濡れた筆先が押し付けられたような感じだった。痛みはない。正確には感覚がまだ痛みだと知覚していなかった。これなら大丈夫かなと思ったのだが「じゃあ続けていきますねー」と

──バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!

と連続で当てられ続けると、次第に痛みが溜まってくる。というか、熱い。「痛いですか?大丈夫です?」5発目くらいで痛みを知覚し、10発目くらいで熱湯をかけられたような堪え難い痛みになる。あごの照射が終わって少し小休止となった。「昔の機器よりも1回のスポット照射の範囲が広くなったので、これでも少ない回数で広範囲をカバー出来るようになったんですよ」
 「次は鼻下ですね。一気にやりますよ」痛い。かなり痛い。涙目になる痛さだ。原理的にはちょっとした火傷をしてるのと同じだから痛いのは当たり前だ。だが終わって顔を確認してみたら少し赤くなっている程度。火傷したみたいな痛みはレーザー照射時だけで、特になんともなっていなかった。
 後で聞いたのだがレーザー照射をする前は、脱毛部位の毛を剃ってくるのが望ましいとのこと。外まで伸びてる毛があると、それもレーザー照射で高熱になり、無駄に火傷の範囲が広がるらしい。筆者も伸ばした状態で美容外科に行った(処置するにはその方がいいと思ったのだ)ので、どうやら余計な痛い思いをしていたらしい(汗。
 最初は小さいニキビが出来たり焦げた毛根が泥棒ヒゲのように黒く目立っていたが、2〜3日で通常に戻り、2週間ほどでポロポロ毛根が取れてきた。これを毎月続ければいいらしい。意外と簡単だ。ちなみに料金は1回6,000円程度。今思えばエステサロンは1回15,000円~20,000円とかいう価格だった気がする。脱毛だけだったら確実に美容外科の方がええやん。なんで俺エステに逝ったんだろう?

 結論!永久脱毛はエステではなく医療機関で行うべき!エステの初回料金に騙されるな!ヒゲ脱毛は顔の一番痛覚の集中している箇所の処置になるので、確かに痛いのだが、今後ずっとヒゲ剃りの煩わしさから開放されることを考えると割安だともいえる。例えるなら眼鏡やコンタクトから開放されるのレーシック手術みたいなものだ。人生をちょっとだけチート出来るのである。
 最後にちょっとだけ補足。皮膚の毛根の上部には脂線があって、肌を皮脂で保護する役割がある。皮脂があるからこそ皮膚を乾燥から守り、皮膚を弱酸性に保ってくれる皮膚常在菌も活動出来るのである。毛が生えているのはちゃんと理由があるのだ。脱毛をすればその部分の皮膚が乾燥肌になりやすく、雑菌による炎症も起こしやすくなる。毛根は一度壊したら修復しないものなので、永久脱毛を考えている人は十分に検討してから決心されることを老婆心ながらお勧めしたい。
 そういう訳で筆者みたくエステで大恥かいたからといって、ヤケクソで美容外科に行くのはオヌヌメしない。久しぶりにドキドキした体験で楽しかったけど。

■もう一度女装サロンに行きました

 ダイエットや体型作り、スキンケア、脱毛、衣装などの分野では応用のノウハウや知識が貯まっていったのだが、逆にメイクに関してはずっと魔理沙のときのフルメイクパターンから変えなかった。どのような考え方で、ここからどうアレンジしていいのかが分からず、他のキャラのときもずっとこのパターンを踏襲したのである。
 一番最初の魔理沙のときにマスターしたのは「元気で男勝りな女の子」「恋の魔法使い」というキャラの特性に合わせた、オレンジのチークを基調とするガーリッシュ系の可愛いメイクだ。霧雨魔理沙の衣装は白黒のモノトーンだった為、そこから顔が際立つよう派手目のメイクを女装サロンのスタッフさんと話し合いながら作っていったのである。
 次に挑戦したアリス・マーガトロイドの衣装は、ブルーのワンピースにピンクのベルト(+白いブラウスに白いケープ)という組み合わせだ。あまりメイクの試行錯誤をする時間がなかった為魔理沙メイクでそのままコスプレをしたのだが、色彩の美的感覚からすれば「ブルーとピンクの衣装」に「オレンジ系のメイク」というのはあまり合わない組み合わせだろう。それにアリスは男勝りというよりはインドア派であり、大分スイーツな性格である。本来ならキャラによってメイクの演出を変えていくべきなのだが、正直なところどういう風にアレンジすればいいのかわからない。こればっかりは女性に意見を聞きたいところだ。
 それにメイク自体、最初に女装サロンで基本的な流れを教わって以降、誰かに相談したりレクチャーを受けたりすることもなく独学で続けている。今一度基礎のおさらいを受けた上で、ステップアップの講習を受けてもいいだろう。という訳で、またまた女装サロンに行ってみた。

 女装サロンは探せばいろいろあるが、筆者の場合は女装ではなくメイク講習を受けに行くだけなので、純女のスタッフさんから1to1で受けられるところが望ましい。また女装サロンに行くのがどうしても恥ずかしい場合、舞台メイクを取り扱う三善やバレエ用品を取り扱うチャコットあたりでも男性向けにメイク講習をやっている。こういう社会インフラはどんどん利用しよう。久しぶりに行った女装サロンでは「お久しぶりー、みちろうちゃーん」とスタッフさんが出迎えてくれて、さっそくカウンセリングが始まった。
 女装サロンは女装のためのサロンであって、必ずしもアニメ系ゲーム系の女装コスプレに造詣が深い訳ではない。まずはコスプレ系メイクとはなんぞや?というところの確認から話が始まった。
 前提としてコスプレは、衣装の見た目が極端に派手だ。コスプレ衣装を着て普通のメイクをすると、派手な衣装にばかり目が行ってしまい顔の印象が負けてしまう。冗談抜きにのっぺらぼうで不気味に見えるのだ。そこで衣装に負けないような、通常よりもメリハリを強調したメイクが必要である。女装の場合これに加えて、顔の下半分のヒゲ跡やあごのゴツさが目立たないように、顔の上半分のアイメイクを重点的にやる必要がある。その上でコスプレするキャラの特性に合わせ、配色やテクニックを駆使するのである。
 次にステップアップのメイク講習である。まずはおさらいで筆者のメイクの流れをスタッフさんに見てもらう。ある程度予想はしていたが、筆者のメイクはだいぶ自己流に偏っていた。具体的にはベースメイクのスティックファンデーションを濃く塗り過ぎで、逆にアイライン、アイホール、アイシャドウのアイメイク系全般の塗りが足りなかったのだ(汗。要するに薄くするべきところが濃く、濃くするべきところが薄かったのである。今回ここが矯正されただけでも来た意義があったといえよう。
 さて、いよいよワンパターンから抜け出す為のアレンジ方法である。スタッフさん曰く、基本が出来ているのであれば変えるべきところは色の選び方と載せ方、ラインの引き方だという。
 色は衣装やキャラのイメージに合わせていくことになる。可愛くするならピンク系、クールにするならブラウン系やゴールド系、アダルトならワインレッドというように。ブルー系やグリーン系の組み合わせは難しいと思われがちだが、衣装やウィッグの色と合わせてアイメイク部分に使うなら意外と自然に見えるようだ。容姿によっても印象は変わるため、各個人で実際に試してみるしかないだろう。女性誌を見れば様々なコンセプトのメイクの作例写真がたくさん載っているので、だいたいの印象は掴めるようになっている。
 アイラインの引き方や引く位置によっても印象はガラッと変わる。直線的につり上がるようにすると強気でクールになり、弧を描くようにすれば柔らかい印象になる。限界はあるが、目の淵を多少はみ出すようにアイラインを書いても、目が大きく見える分には違和感を感じない。可愛くたれ目にすることも出来るし、生まれつき目の位置が離れ過ぎていたり近過ぎたりする人は適正な位置に来るよう印象づけることも出来る。これに加えてアイラッシュ(つけまつげ)を二重に付けるとかなりの「ぱっちりおめめ」になるらしい。一つの目に二つ付ける発想はなかった。
 筆者の個人的な話だが、アイメイクの作例については女性誌よりもネットのグラビア写真集サイトが役に立った。今はメガピクセルの時代だ。例えばレースクイーンの写真を配信している「サーキットの星」では4256×2832ピクセルという超高解像度の写真がダウンロード出来る。美女とはいえはっきり言って毛穴が見えるレベルのデカい写真なのだが、プロのメイクアップアーティストの手によるメイクがじっくり観察出来るのは実に都合がいい。通常女の子の顔を露骨に眺めるのは失礼だが、写真集であればピクセル等倍まで拡大して確認することが可能だ。3,990円で30日間ダウンロードし放題なので、とりあえずひと月分だけ購入すれば様々なパターンのメイク作例が確認出来る。ちなみに「コスプレックス」の方はあまり上手いメイクではなく参考にならなかった。

 女装サロンで女性のスタッフさんとあれこれ話しながら講習を受けていたのだが、スタッフさんによると「ネットに出ているコスプレイヤーさんたちは確かに美人ばかりだけど、まだまだメイクの可能性を引き出している人が少ない」という。メイクはもっと可能性を秘めている。女装コスプレに限らず多くのコスプレイヤーは、メイクの技術や知識、腕が不足してるだけであり、テクニックを磨けばまだまだなりたい理想の自分、なりたい理想のキャラに近づけることが出来るらしい。視点を変えるとそれは、多くのコスプレイヤーが衣装やパーツに凝るところで止まっていて、まだメイクの分野の探求にまで手が回っていないということではないだろうか。

スタッフ「メイクは奥が深いよー?みちろうちゃんも頑張って腕を磨いてね」
筆者「リップとかそろそろ切れ始めてるからまた揃えないとなぁ。あれ?残ってるものはそのまま使い続けていいんでしょうか?」
スタッフ「油は時間とともに酸化するから、基本は1年程度で使い切ること。みちろうちゃん、女の子がそんな古いの使い続けちゃダメよ」
筆者「あ、やっぱりそうですか(汗。」

 化粧品が酸化するなんて知らなかった!日焼け止めとかもワンシーズンで使い切らないとダメになってしまうらしい。うーん、もったいないなぁ。
 今度男友達の部屋に遊びに行ったときとか、要らない化粧品や女性下着とか部屋に置いて忘れていってみようか。キレる彼女を目の前にして「違うんだ!それは女装する友達が置いていったんだ!」の弁解がどれだけ通用するかテストしてみるとか(やめなさい。ええ、この前それをナチュラルにやらかした前科者は私です。

■自己催眠をかけて女体化してみよう

 読者は催眠術を体験したはあるだろうか。あるいは心理カウンセリングでイメージセッションを受けたことはあるだろうか。宗教の怪しい儀式や、テレビのやらせのような印象を持っているかもしれないが、実際の催眠の中身は心理学、脳科学、体の構造を利用したマインドコントロール技術である。
 人間の意識は非論理的な潜在意識と、覚醒時に論理的に思考する顕在意識で構成されている。顕在意識は脳の活動領域のうちの1割でしかない。催眠とは脳を半覚醒状態にし、意識を批判能力が除外される潜在意識の段階まで誘導することなのだ。
 元々はベトナム戦争から退役した軍人のPTSDを治療する為に、アメリカによって研究開発され、それが1990年代に日本の新興宗教や自己啓発セミナーに輸入されてきた経緯がある。催眠状態になれば、聴覚以外の器官感覚や批判する思考力が消え、言葉をそのまま受け入れるようになる。元々は治療目的のプログラムだが、暗示にかかったり幻覚が見えたりするので、洗脳などへの悪用を危惧されているのも事実だ。
 だが実際に人をマインドコントロールするには、催眠状態(暗示にかかりやすい状態)になる前に、静かな場所で、リラックスした状態になり半分寝てる状態になってもらい、暗示を掛ける人の話に耳を傾けてもらわないといけない。本人に聞く意思がなければ無理だろう。マインドコントロールは暗示を掛ける人と掛かる人の共同作業なのである。
 脳のメカニズムというものは割とテキトーなもので、「想像」と「現実」の区別を付けられない。例えばプリンを食べたと想像してみよう。プリンの味を思い浮かべ美味しく食べてるところを想像すると、現実にプリンを食べていなくともヨダレが出てくるのではないだろうか。これは脳で思い描いていることが「想像」であろうと「現実」であろうと同じ神経回路を使って処理され、各器官に指令が出される為である。ある体験を思い出したり、想像したりしているときも、脳にとっては現実に体験しているときと同じ作用が働くのである。何かをイメージするということは、脳にとっては現実に体験しているのと同じなのだ。これを催眠状態の時に誰かに語りかけてもらうと、自分で好きな暗示を掛けることが出来、自由に好きな体験が出来るのである。

 前置きが長くなってしまった。それではこの脳のバグを利用して、早速女性になってみよう。
 催眠は本来専門知識を持った心理カウンセラーに、「イメージセッション」というセミナー形式で掛けてもらうことが一般的だ。静かな部屋でカウンセラーと対面し、ゆったりした椅子に座る。穏やかな語り口に促されて深呼吸をしたり、目を閉じたりしながら、次第にまどろんでいくというやり方である。1回につき15〜20分程だ。
 だがまぁ、カウンセラーに女体化を依頼したら最後、そのまま精神科を紹介されるのがオチである。今後そういう女体化催眠サービスが秋葉原辺りで出てくるかも知れないが、今回は自分で自分に催眠を掛ける「自律訓練法」を試してみよう。
 自律訓練法とは6段階のステップによって自分で催眠誘導する方法である。まずは準備として先に食事とトイレを済ませ、パジャマなどリラックスした衣類に着替える。部屋は暗くし、快適な温度を保つ。携帯は電源を切り、出来るだけ静かな状態を作る。気が散るものは全部片付けておく。ソファに腰掛けてもベッドに横になってもいい。そのまま寝てしまっても大丈夫な状態がベストだ。目を閉じてリラックスし、何も見えない、何も聞こえない、気持ちのいい状態を作る。意識が少しまどろんできたら、ゆっくりと次のことを段階的に思い浮かべ、自分に暗示を掛けるのである。

準備段階「気持ちが落ち着いている…全身の力が抜けている…」
第1段階「手脚が重たく感じてくる…」
第2段階「手脚がポカポカ温かくなってくる…」
第3段階「心臓の穏やかな鼓動が聞こえる…」
第4段階「呼吸をしている…とても楽に呼吸をしている…」
第5段階「体の中心が温かい…お腹のあたりが温かい…」
第6段階「額は涼しい…頭は冴えている…」

だいたい30分くらい掛けてここまでくると、眠るギリギリの半覚醒状態であり脳の思考以外の感覚はなくなってくる。これで催眠状態は完成だ。
 次に自分に暗示をかけてみよう。「私は女の子…私は女の子…私は女の子…私は女の子…」と頭の中で何度も反復し、無防備になっている脳にダイレクトに焼き付けるのだ。むにゃむにゃ…身長は154cm…体重は44kg… 上から81…63…85…ぐう。
 そのうち何の疑問も感じずに、自分が女の子の体になった感覚になる。自分で自分のマインドコントロールをしてるのだから、あとは女体化した自分を煮るなり焼くなり好きにしたらいい。セクシーなドレスを着てキュンキュンしてもいいし、女子トイレにも行けてしまう。おっぱいを体感してもいいし、なんなら黒い欲望をぶつけてもいいのである。脳内なら好きな幻覚は見放題だ。
 さてこのまま寝てしまうのでなければ、最後に覚醒のプロセスが必要である。催眠状態から覚醒状態にきちんと切り替えておかないと、頭がぼんやりしてしまうのだ。いくつかバリエーションはあるが、ゆっくりカウントしていく方法が一般的である。

「……10数えるとスッキリ気分よく目覚める……」
「……1つ……体が温かくなっていく……」
「……2つ……どんどん温かくなる……」
「……3つ……手脚も温かくなる……」
「……4つ……手脚が重たくなってくる……」
「……5つ……手脚に力が戻ってくる……」
「……6つ……頭も冴えてくる……」
「……7つ……頭がだんだんスッキリしてくる……」
「……8つ……もうすぐ気持ちよく目覚める……」
「……9つ……全身シャキッとしてくる……」
「……10!はい!覚めた!おはようございます!」

という感じ。ここで大きく伸びをして、深呼吸する。以上が自律訓練法を応用した女体化プロセスの流れだ。実際やってみると気分はかなり爽快になれる。超気持ち良い。心身ともにリフレッシュ出来るのだ。

 ハイ、かなりオブラートに包んで綺麗な精神活動みたいに書いてきたが、本音を言うとかなりエログロな妄想になりやすい(ぉ。筆者がこのプロセスに着想を得たのは実際のカウンセラーによるイメージセッションと、鶴見済著の『人格改造マニュアル』だが、実はこのテの自己催眠用の音源ファイルや同人CDはたくさんある。要するに催眠オナニー用だけど(死。
 上記の自律訓練法の準備をした上でヘッドホンを掛けて聞くのである。ネットでの音源無料配布もあるので興味のある人は探してみるといい。いくつかダウンロードして聞いてみたが、本物のカウンセラーのようなゆったりとした語り口で、ロリ声の女の子が自律訓練法のプロセスを促しながら催眠誘導してくれる。その後そのままエロエロなシナリオを展開しながらたっぷり1時間…。この本でのテーマとは趣旨が異なるので、そこらへんはお好みに合わせてご利用は計画的に(汗。ちなみに今回のコミケでも催眠誘導CDは売られており、中には女性向けの男体化プログラムもある。チンコを生やしたい腐女子も夢が叶うのだ。いやはや、すごい時代になったよなぁ。

■女装コスプレイヤーも盗撮に気を付けよう

 幸い筆者は遭遇したことはないのだが、近年は女装していると痴漢の被害にも遭うそうだ。ニコニコ動画では「女装で痴漢にあうのか検証してみた」というものがあり、本当に満員電車で「痴漢vs女装」による決戦のバトルフィールドが展開されている。

痴漢「どちらが真の変態か、決着をつける必要がありそうだな!!」
女装「望むところだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

まぁどちらも逮捕されてしまえと思わなくもない。

 さて、女装で街を歩く場合はともかく、コミケやコスプレイベントでの女装コスプレはどうだろうか。筆者は痴漢に遭ったことはないものの、コスプレ会場では撮影が広く行われているためか、盗撮への遭遇は日常茶飯事だったりするのである。
 女装コスプレをしてコスプレ広場を歩いてみると、筆者でも普通に声を掛けられて撮影を依頼される。初期の頃は恥ずかしくて逃げるように拒否していたのだが、最近は声を掛けてくれるカメラマンに申し訳なくなってきて「ネットへのアップロードをしない」「個人で楽しむ範囲で」という条件で応じることも多い。そうしているとたまに囲み撮影になることもある。女装なんだけどいいのだろうか(汗。ちなみにコスプレイヤーとしての名刺は作っていない。
 そんななか、ときどき勝手に撮っていく輩がいるのである。筆者もカメラ小僧なので、相手のカメラとレンズを見ればだいたいどんな絵を撮っているかが分かる。筆者がスカート姿で座っているときに、遠くからキヤノンの200mmがこちらを向いていることもある。APS-Cサイズだと1.6倍換算で320mm相当だ。遠い位置とはいえ、あの距離だと筆者の全身はファインダーに入りきらないであろう。股間しか狙っていないんじゃなかろうか。みたいな。
 自意識過剰ではないだろうかと筆者自身も思うことはあるのだが、そこで筆者が立ち上がったりすると相手はカメラを向けるのを止めるのだ。ああやっぱりそういうことなのかなとゲンナリする。
 女装コスプレしてると男性でいるときよりも明らかに視線がこちらを向く。まぁ見られることを前提でイベントに参加しているのだから見るのは自由なんだけど。しゃがんだときに「ガッ」とパンチラを期待するような視線を送るのはもう少しオブラートに包んで欲しいなとは思う(汗。こっちも見えてるよ。ちゃんと露出対策してるから。

 筆者の場合はパンチラの防衛策として、魔理沙の衣装に付いてきたドロワーズを他のキャラのときも穿いている。夏コミのとき初日でドロワーズが汗だくになったりすると、2日目以降は代替として黒いスパッツを穿いたりもする。
 そういえばですね(汗。去年の冬コミでアリスをやっていたとき、実は魔理沙のドロワーズを持参するのを忘れてきてしまい、普通の女性モノのショーツでその日一日過ごしたことがある。あの時はずっとノーパンみたいな感覚で股間がスースーして、スカートの中を盗撮されやしないか緊張したものだ(汗。
 筆者もそうなのだが、女装コスプレイヤーはパンツが見えてしまうポイントとかをあまり把握していないことが多い。階段を登るときや物を拾う瞬間、地べたに座るときなどは常に股間を気にした方がいい。逆に、階段を登るときなどに的確にスカートを手で押さえることが出来る女装コスプレイヤーがいたとすれば、その人は普段からスカートを穿いて街を歩いている可能性が高いといえる(汗。
 盗撮対策として女性コスプレイヤーには常識の話らしいのだが、コスプレの女子更衣室の出口では「露出対策チェック」なるものがあるらしい。スカートのコスプレ衣装はその場でスカートをたくし上げ、見せパンを穿いていることをスタッフに見せなければならないとのこと。初心者など躊躇しているとガバッとめくられてしまうらしい。コミケや例大祭の男子更衣室ではそんなチェック一切なかったけどな(汗。自己責任にするとパンチラやモロ出しでカメラ小僧の注目を浴びようとする困ったちゃんが出てくるらしいので、運営側も変態対策をしなければならないのだろう。
 女子更衣室は男性の視線がない分かなりカオスな状態らしい。着替えの途中で素っ裸になったり、散らかし放題だったり、おしゃべりで長時間滞在するなどマナーの悪い人も多いとのこと。男子更衣室とは対照的だ。男子の方は一人でコスプレしに来る人も多いため、みんな黙々と着替えている。イベントによっては女装コスプレは非常に肩身が狭かったりするので、筆者なんかはそそくさと着替えている(汗。
 最近はスマホでの動画盗撮も多いと聞くので、ブラジャーを付けたりおっぱいを詰めたりするときは、必ず上にシャツを着た状態で行っている。ショーツの穿き替えも先にスカートを穿いてから壁に向かってしている。まぁ、女装の着替えなんて見たい人いないと思うし、そう信じたいけどね。でもきっといるんだろうなぁ(汗。

■全国紙の女性記者から取材の打診がきました

 女装本第2巻を書く直接のきっかけとなったのは、講談社の編集者の方から「げんしけん二代目の男の娘キャラに、女装本第1巻の内容を語らせてよいか」という問い合わせのメールが来たことだった。筆者としてはまさか一発ネタの本がこういう形で広がっていくとはと笑ってしまったのだが、好きな作家さんの為になれることは率直に言って嬉しかった。嬉しいあまりに勢いで女装本の続編を出してしまったのだ。良くも悪くも女装男子研究本がシリーズ化してしまった瞬間であった。
 で、今回は毎日新聞から筆者を取材したいというメールが来た(汗。何!取材!?全国紙から!?しかも「女装男子」についてであるorzまたか、またなのか!ウチはカメラ小僧の評論サークルなのに、どうして女装ばっかり注目を浴びるんだ!という訳で、奇しくもまた女装本に書くネタが舞い込んできたので、その顛末を記してみることにする。

 打診が来たのはこの原稿を書いている最中の11月のことである。「このたび突然のメールで失礼いたします。」で始まるメールは、毎日新聞の女性記者からであった。届いたメールを要約すると

・このたび、女装や化粧をする男性について関心があり、取材したい
・みちみち様の「女装男子研究本」に関心がある
・ぜひ、みちみち様に直接お会いしてお話をうかがえないか
・一時のブームや趣味としてではなく、ジェンダーの視点や社会的な意義も含めてご紹介出来ないかと考えている
・その辺りのご意見を聞かせていただけないでしょうか?

という内容だった。最初は「全国紙に記事として載っちゃうかも」と思い掛けない事態にはしゃいでいたのだが、冷静に読み返してみるとどうも筆者と女性記者の間には認識のズレがあるようだ。
 特に4番目の「一時のブームや趣味としてではなく、ジェンダーの視点や社会的な意義も含めて」という部分が妙に引っかかる。女装コスプレ活動をする筆者に話を聞きたいといわれても、コスプレでジェンダーとか考えたことも無いんだけどな(汗。
果たして筆者なんかでいいのかしら。
 そう思ってまずは軽くボール球を投げ、様子を見てみることにした。こちとら「ただの趣味だよ」と率直に思うところを返してみたのだ。筆者の返事は大体こんな内容である。

 初めまして、よろず評論サークル「みちみち」のみちろうです。取材の件に関しまして、いくつか確認したいことがございます。
 率直に申し上げますと、当方は「一時のブームや趣味として」活動しております。また、結果的に女装になっただけであり、あくまでコスプレ活動の延長線上の「男性がする女性キャラのコスプレ」です。昔からある純粋な異性装文化や、トランスジェンダーとは関わりがありません。それぞれ異なる経緯・動機から発祥しているので、やっていることは同じ女装でも、お互い関わりも連携も交流もありません。
 当サークルで出している「女装男子研究本」という同人誌は、タイトルにこそ研究の文字がありますが、中身は個人的な女装活動の顛末を記録したエッセイ集です。○○様の仰る「ジェンダーの視点や社会的な意義も含めて」という部分に関しては、あまりご期待に沿える言葉を持っておりません。

こんな感じ。返事を書いたときに思ったのだが、そもそもネタ満載の破天荒な女装奮闘記から「ジェンダーの視点で話を聞きたい」になるだろうか。もしかしたらこの記者は本を読んでおらず、単にサークルのウェブサイトを探し当てたからメールを送ってきたのかもしれない。直接確認はしなかったけど。
 で、女性記者からはすぐ返事がきた。内容としては下記の通り。

・ご指摘の通りに、女装されている方々に様々な経緯や動機があるのなら、なおさら取材でお話をお伺いしたい
・筆者が詳しい分野である「男の娘」というカテゴリや、そのブームの流れでここ数年増加している「男性がする女性キャラのコスプレ」についての話で構わない
・出来るだけ一つの方向に偏らないような記事にしたい

うーん。どうもお互い、見ているものがかなり違う気がしてきた。女性記者が「社会の中の女装文化」という視点で取材したいということらしい。それ自体は構わないんだけど、だとしたら取材対象はコスプレイヤーである筆者ではないのでは?筆者はあくまでファン活動として女性キャラのコスプレがしたかったから、結果として女装コスプレをしてるだけなのだ。オタクとしての矜恃はあっても、女装男子や化粧男子としてのプライドと誇りを持って、女装家として普段から女装活動している訳ではない。
 あまりエラそうに語れることではないが、筆者は女装が禁断的な趣味だという自覚がある。未だ女装することに躊躇や恥ずかしさがあり、だからこそ濃密で楽しいんだけど、所詮遊びであって、胸を張って「ジェンダーとして女装は市民権を得るべきだ」なんて社会派を気取るつもりはないのである。
 取材自体は確かに面白そうだ。興味はある。だが女性記者が「社会派の女装男子活動家」みたいな感じで構成を描いているのであれば、それは明らかな誤解であるし、捏造される恐れもある。だから次のボールはややアウトコースで投げてみた。

当方を取材されるなら「女装をしている男性」としてではなく、あくまでオタク文化の「男の娘」ブームでの「女性キャラに扮する男性コスプレイヤー」として紹介して頂きたいのです。ご了承頂けますでしょうか。

まぁ、女装男子の紹介という記事からは趣旨が離れるし、ここまですれ違いが続けば「この取材はなかったことに…」という流れになるだろう。このお願いを受けてなお筆者を取材したいという記者であれば本物だ(汗。本気でこの分野を知りたいということになるので、そのときはこちら側が折れるしかないだろう。
 取材を打診しておきながらやっぱり取り止めるということは、やや失礼に当たるも往々にしてあることだと思う。記者の側に勉強不足の感はあるが、様々な分野に首を突っ込まなければならない仕事であり、悠長に勉強してる時間はないのかもしれない。お互い見ているものが異なると判明したら、その時点で断ることも誠意だ。まぁ、まだ取材取り止めが決まった訳ではないので、まずは女性記者の反応を待つことにする。下手すると取材を受けることになるかも知れないので心の準備だけはしておこう(汗。

── で 、 そ の 後 な ん の 音 沙 汰 も な し 。

 取り止めと謝罪の連絡が来るだろうなと思っていたら、なんとその後現在に至るまで女性記者からは何の連絡も来ていない。「なおさらお話を伺いたい」と言っておきながら都合が悪くなると無視である。いくらなんでも社会人失格だろ。いつもそんな失礼な取材してんのかよ。という訳で毎日新聞はただの傲慢なマスゴミだった。氏ね。

■このままではいけない!そんなことは分かっている!

 大学の時に女装の趣味を隠して付き合っていた彼女がいた。彼女に女装の趣味をカミングアウトしたことは無かったが、ある日彼女に勧めらるがまま女装をしたことがある。彼女の服を借り、彼女にメイクをして貰って、女装の格好で外に出て一日デートをした。スリルがあって楽しかったし、彼女も喜んだらしく「またやろうよ」という話をしていた。
 私は彼女が女装に寛容なんだと思った。だから次のデートのときには自分から女装をして、彼女の部屋に遊びに行ったのだ。洋服は妹のものをこっそり借りたと言えばいい。彼女はきっと喜んでくれるはず…。
 ところが彼女は私の姿を見て、引いた。かなり醒めた様子で部屋に招き入れ、彼女の服のなかで男性が着てもおかしくないものに着替えさせられた。どうして…?こんなはずじゃなかったのに。
 ──結局、彼女とは一年ほどで別れた。フラれた要因はいろいろあるが、あの日彼女に言われた言葉がずっと重くのしかかっている。

「結構尊敬していたんだけどな…」

 上記は筆者の話ではなくYahoo!知恵袋の恋愛相談にあったエピソードである。小説風に書き下ろしてみたら強烈に痛々しい話になってしまった(汗。
 当然ながら女装はマイノリティーの趣味である。ネットのお陰で恥ずかしい思いをせずとも衣装や化粧品が手に入りやすくなり、男の娘ブームで気軽に高いレベルの女装が始められる環境になってきたとはいえ、世間の風当たりは依然厳しいままだ。だからこそ背徳的でもあり楽しいのだが、堂々と死ぬまで続ける覚悟を持つか、こっそり活動つつどこかでそっと卒業するか、出口戦略を考えなければならない。
 女装をしている人はみんな同じようなことを考え、そして悩んでいる。どうやめるかを悩んでいるのではない。楽し過ぎて、そして幸せ過ぎてやめられないのである。
 筆者は当初、年齢的に限界が来れば女装がどうしても女の子に見えない、オバサンに見えてくるときが来る、そのときはこの活動を諦めなければならないと思っていた。だがその認識はどうやら間違いらしい。
 女装の基本は「男性的特徴を隠し、女性的記号を身にまとう」である。つまり、衣装で身体の都合の悪い部分を隠し、メイクで肌の都合の悪い部分を隠し、ウィッグや詰め物や体型作りで女性的記号を全面に出すということだ。これはそのまま年齢が隠れやすいことも意味する。若ければ若いほど女装は有利だが、女装を続ければ続けるほどノウハウやテクニックも磨かれ、年齢不詳になることも出来る。困ったことにいつまでも女装出来てしまうのだ。
 また一方で単純な話、人は楽しんでる趣味をそうそう簡単にやめられるものではない。特に性嗜好に関わるものは禁欲するとストレスが溜まるだろう。結婚してから女装そのものはきっぱりやめても、たまにストレス発散として、着るわけでなくともレディースファッションをこっそり買ってすぐ処分する人もいるらしい。カミングアウトが出来れば多少は楽になるかもしれない。友達ならぬるい目で眺めることは出来ても、仮に身内の男性(例えば父親とか)に女装趣味があったとしたら、素直に応援出来るだろうか。男の娘ブームで女装が流行っていると勘違いしてはいけない。女装は今も理解者の少ない禁断の遊びなのである。
 女装は危険である。麻薬のようなものだ。このままではいけない!このままでいいはずがないんだ!そんなことは分かっている!でもああちくしょう!女装と出会ったことで今とても幸せなんだ!
 毎回コミケに向けて健康な身体作りをするモチベーションになっている。正しい食生活、適度な運動、睡眠時間の確保、お酒も控えて肌もキレイになる。仕事に追われ怠惰になりがちな毎日を改善出来るのである。有酸素運動で良い汗をかき、ストレッチで疲れの溜まりにくい丈夫な身体になる。目標に向かって日々努力をする自分が大好きになり、メンタル面も健康になれるのだ。自分が幸せになると周囲の人にも優しくなれる。友達も喜んでくれる。新たな出会いもある。女装コスプレ活動を中心に、様々なことがいい方向に循環し始めてきたのである。心の中のもう一人の自分は常々女装をやめたいとは思っているのだが、少なくとも筆者は今のところ楽し過ぎて止める気配がないようだ。
 ちくしょう!人生詰んだ!裏街道を走るつもりが行き止まりだった!身動きが取れない!楽しい!超楽しい!楽し過ぎる!人生楽し過ぎて死にそうだ!怖い!助けて!よし、じゃあ次は牧瀬紅莉栖やってから女装やめる!本当にやめちゃう!絶対だぞ!

■おわりに

 いかがでしたでしょうか。正直女装本はもう書くネタが無いと思っていたのですが、書き上げてみたら当サークル史上一番文字数の多い作品となりました。この原稿を書いている時点ではまだ本になった状態を見ていませんが、恐らくほとんどのページで文字がビッシリな感じになると思います(汗。書いている途中から編集がゲラゲラ笑い転げていたので内容は大丈夫だと思うのですが、立読みでパラパラめくったときに「うっ…!」という印象にならないか少々不安です。

 実は、11月の中旬に編集の指示で一度途中まで書いたプロットを全部捨てました。3年間の集大成にしようと頭が硬くなり過ぎてしまい、第2巻以上に無味乾燥で客観的な評論になっていたんですよね。読者から「第2巻より第1巻の方が面白かった」との声があったこともあり、この方向性ではいけないなーとイチから書き直すことになりました。本音を言うと一度途中まで積み上げたものを崩すのは結構精神的にキツいものがあり、しばらく茫然自失してました(汗。
 が、そもそも女装本第1巻は3日間で一気に書き上げたエッセイであり、いつもの論理立てた評論とは全然違うんですよね。第2巻は比較的時間を掛けてじっくり書いたのであの構成になりましたが、そもそもエッセイなので勢いで一気に書き殴った方がいいだろうと。今回はとにかく筆の向くまま構成も一切気にせず、思い付いたこと次々書いていったら2週間ほどで終わりました(えー。
 あと執筆の為に集めていた資料類の情報は9割ほど捨てました。各章では「こういうものがあるよ」という紹介だけに留めて、後は読者に自己責任でググってもらおうというスタンスに。免責事項として医療関連情報は正確さを担保しないので、鵜呑みにしないで話半分に読んでおいて下さい。自己催眠は心身の弱ってる人がやるとトランスがキマり過ぎて体調を崩すらしいので注意。

 さて、読者の皆様の支えがあり今回のコミケでサークル活動も4周年を迎えることが出来ました。冊数が増えてそろそろテーブルに既刊も全部は置けなくなり、筆者だけでは頒布が追いつかなくなる程混雑する状態になりました。個人で通信販売対応するのもボチボチ限界かなと感じています(汗。来年は今一度サークルの体制を建て直し、さらに面白い同人活動が出来ればなと思っております。
 次回は「カメラ小僧の裏話」シリーズに戻り、またいつもの評論本になる予定です。「いつもの評論」が痛い方向になるか、真面目な方向になるかはお楽しみということで(汗。割と筆者もどうなるかわかりません(ぉ。

 最後に謝辞を述べさせて頂きます。
 表紙はいつも通り高崎かりんさんに描いて頂きました。ありがとうございます。今回は「もやしもん」の結城蛍と沢木直保。おまけの絵も付いてきたので奥付のページで使っています。筆者はゲイではないですよー(汗。ちゃんと女性が好きです。マインドコントロールを駆使して調教したりしないでね(願。
 売り子さんは華子さんと庶務部長さんにお願いする予定です。頒布がだんだん忙しくなってきたけど、今回はちゃんとスペース前が混乱しないように筆者も売り子を頑張るので、今後ともよろしくお願い致します。
 新刊及びオフセット誌に切り替える既刊の誌面デザインと編集をお願いしているののさん、いつもありがとうございます。今回はいつもの3倍くらいデザインに割ける時間がある…かも。なかったらごめんなさい。むしろ既刊の原稿手直しの方が大変だったかな(汗。女装本第1巻第2巻の再販分も無事完成するといいなぁ。最後までよろしくお願い致します。

 いつもタイトルを決めてから執筆するのですが、今回は「我が生涯が一遍に台無しになったエピソードを書いた本」というよりも、この本が出ることで「我が生涯がこれから一遍に台無しになってしまう」ような気がしてきました(汗。
 まぁ、いっか。いつも後先考えないでやらかしてるけど、遊びは常に命懸けだから面白くなるんですよ。コミケだって買わずに後悔するより買って後悔する方が粋じゃないですか。死ぬまではきっと死なないはずなので、それまでは筆者のチキンレースにお付き合い頂ければ幸いです。巻き添え喰らったらゴメンね(ぉ。
 それでは皆様よいお年を!寒いけど、風邪引くんじゃないゾ!

2012年12月某日 喫茶店でのMacBook Proにて
よろず評論サークル「みちみち」代表 みちろう

■奥付

【誌名】我が生涯は一遍に台無し 女装男子研究本3
【発行年月日】2012年12月31日 コミックマーケット83 初版
【構成・執筆】みちろう
【イラスト】高崎かりん
【誌面デザイン・編集】のの
【印刷】大陽出版株式会社
【発行サークル】みちみち
【発行責任者】みちろう
【ウェブサイト】http://miti2.jp
【連絡先】circle@miti2.jp

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